NEW GLIDER FLIGHT REPORT
Report : Nobuyuki Nakano
CUSTOM SAIL VRX


 カスタム・セールはVRX、CRX,GRX,TRX,と4機種のラインアップをそろえ、パイロットのレベルに合わせて選択できるようになっている。その基本ポリシーはトレッキング社と共通で安全性につきる。その証明として、このメーカーは全ての機体でAFNOR STANDARDを取得している。そして、二年程前より開発が進められていた今回テストするVRXもコンペ機に迫る性能を持たされると同時にAFNOR STANDARDを当然のごとく取得していた。

 この新しい機体VRXはITVでも活躍していたデザイナー、ミッシェル・ル・ブランが開発に一からたずさわっており、翼端の上面にこの製作者のネーミングが誇らしげに記されている。カスタム・セールというメーカーは昔からコンペに力は入れていないが、サンデーフライヤーが安心して楽しめる機体を作り続けてきた。今回も安全を第一としてSTANDARDにこだわった上でどこまで性能を上げることが出来るかを追求した機体となっているとのこと。技能証レベルからいえば2機、3機目となるNP証から乗れるスポーツ機ということになるがはたして実力の程はいかがなものだろうか。

3列に分かれたVリブが特徴
 まず機体のチェックから行ってみよう。今回の用意されたサイズはMサイズで、投影で25,86u、翼端までの長さは12m以上ある。セル数も多いが特徴となるのはVリブが3列になっていることだろう。さらに斜めに上面に延びているVリブが3列とも一枚のセールになっていることにより、翼上面の平滑性と美しいプロファイル、翼の前後に対する剛性にも寄与している。ライン数もVリブによって無駄な本数を減らすことが出来、ボトムラインについてはAライザー3本、Bライザー4本、Cライザー4本、Dライザー2本と少な目ながらA,B各ライザーについては2.3mmラインを採用している。

 翼の全体の形はコンペ機としても通用するすっきりとしたハイアスペクトの楕円翼である。上面、下面に透き通るような白のセールを使い、翼端の上部に黒の印刷で誇らしげに機体名を入れ、縦に並んだ3列分のVリブだけに赤を使うことによって、非常に奇麗で上品な仕上がりになっている。さらにこの他に4色の標準カラーが用意されているとのことである。
ライザーについては、ヨーロッパでは一般的になっている全体に短めのタイプで、アクセル部分は上と下の滑車の幅が十センチ程でクイックにすばやく使用することが出来るようになっている。アクセルシステムはA,Bがずれた状態からCが2分の一で引かれる構造である。ただDライザーにトリムがつけられているが使えないように縫い付けてあった。これを使用することによってPAFORMANCEになってしまうということなのでパイロットに納得してもらって使ってほしいそうだ。

思わず試したくなるほどの安定感
 次に立ち上げを行ってみた。通常のライズアップにおいて変な癖は見られなかった。やさしい部類に入るであろう。無風に近い風でも頭の上で走り過ぎず、軽く押さえる程度でOKである。バックハンドでも同じでインテークに風がはらんだときからコントローラブルでパイロットの技量はあまり要求されないだろうと思われる。ライズアップした状態で頭上に上げておくのは簡単であった。適度に押さえて飛び乗りにならないよう後は走るだけだ。

 いよいよ実際のフライトに移ろう。体重63kgで全装備重量93kgでおこなった。テイクオフはライズアップと一緒で問題なく、少々風が強い中で出てみたがグライダーの動きも良く分かり、修正も簡単である。滑空性能は良好だ。感覚的にはどっしりした感じでひらひら感はない。トレーリングエッジの端からとられているブレークコードは引いた分だけテンションが徐々に強くなっていく素直な味付けだ。ターンについても体重移動とブレークコードの割合分担は半々というところがベストか。引いたぶんだけ素直に曲がってくれるイージーさが感じられる。

 体がカチカチになっているパイロットがコントロールしてもなんとか機体がカバーしてくれるだけの柔軟さを持ち合わせている。反対側に体重を乗せてブレークコードを引いてみたが失速しないで簡単に向きを変えることが出来た。センタリングは長めに設定してあるブレークコードから積極的な引き加減と適度な体重移動によって狙ったラインを簡単にトレースすることが出来る。サーマルのコアに乗せ続けるのも簡単であった。

 ただコントロール全体としては敏感過ぎることはなく、落ち着きのある味付けである。じっくり時間をかけて乗り込んだ後から味が出て来そうなタイプの機体である。十時間も乗ればコントロールに鋭さも出てくるはずだ。それから荒れた条件の中では安定感が強いことから大きな安心感を持てることになるだろう。巡航速度は93kgの装備重量では上限に近い方になるため34〜35km/h位。このスピードでも浮きが良く、ブレークコードを使ってスピードを5km/h程度落としてみたがほとんど変わらなかった。コアにとどまる時以外はスピードに乗せて滑空させたほうが効率は良さそうだ。

 スピードを上げる為のアクセルについてはストロークが短くそれでいてそれほど重くなく非常に使いやすいものだ。アクセルシステムはどのメーカーも現在では同じ構造となっており、可変構造で加減を自由に調整出来るのであるがこれほど簡単に引ききれると、STANDARD取得のこの機体では全部引ききるか、引かないか2段変速として使ってしまいたくなる。

 40km/hを優に超えている最高速度からAFNOR STANDARDの実力をみてみたくなった。アクセルを使って最高速度の状態で片翼Aライザーを下まで引いてどうなるか試してみた。半分なくなった状態から90度程旋回に入ったところでダイブは終了し、つぶれた部分は徐々に直っていった。ブレークは使わず体重移動だけでも機体が横を向いただけで直ってしまった。

 では体重を入れずブレーク操作もなにもしないとどうなるだろう。最高速度からの片翼コラップスはさすがに何もしないと過激な動きをしてくれる。サイド方向にダイブをはじめた機体はふらついたまま反対側の翼端も小さなつぶれを引き起こしたが180度ほど旋回したところで完全に直ってしまった。普段我々が無意識のうちにやっている体重移動がこの位効果を持っていることを改めて認識する必要があるということだ。それにしてもSTANDARD規格というのはすごい。風が強くなってアクセルを使ったまま山の裏側へ飛ばされてローターに入り込むと大体こういう状態になるのであるがこれではつぶれてもなかなかツリーランすることも出来ないかもしれない。

 このようにアクセルについてもNP証から十分練習できる余裕があり、初めてアクセルに接するパイロットにも徐々に慣れていけることだろう。ただ滑空比が機体のイージーさと比べて良すぎる為、狭いランディング場を持つエリアではP証以上に推奨したほうがいいかもしれない。NP証では苦労することになるはずだ。きっちり寄せてファイナルラインに乗せることが出来るパイロットならランディング特性も決して難しくはない。フレアーのタイミングも幅があり、多少のごまかしたランディングをしても問題はないがオーバーランの可能性は増えることになるかもしれない。

これからも貫いてほしいスタンダートへのこだわり
 VRX、イージーさを兼ね備えた良く飛ぶスポーツ機の優等生といったところか。たくさんのメーカーがこのスポーツ機の分野でいい機体を出してきているがその中でもトップクラスにあることは間違いないだろう。
 最近のパラグライダーはどのメーカーも本当に良く飛ぶようになったと思う。DHV、AFNOR共につぶれに対する安全規格面も充実してきており、十分に機能している。各社ともスポーツ機の開発に力を入れ性能と安全性を実現した新型機を出してきているが、DHV2、2―3、PAFORMANNCEの多い中で、今後はカスタム・セールのVRXのようにSTANDARDでどのくらい滑空性能とコントロール性を伸ばせるか、あるいはDHV1クラスでも同じように開発していくものと思われる。近い将来全てのスポーツ機は回複性の面でDHV1または,STANDARDが基準となってしまうだろう。そういう意味ではVRXは時代の先駆けの機体である。パイロットにとってうれしい時代である。

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